社長の思い 環境について

本日は当社ホームページにアクセスして頂き誠にありがとうございます。

平成10年2月、先代より株式会社マルトを引継ぎました。その間、鮎釣りには厳しい日々が続きました。昭和62年に四国徳島で感染した冷水病(フラボバクテリウム・サイクロフィラム)は、社長に就任した頃には、全国に蔓延し放流河川は殆ど全滅に近い被害を受けました。行政も色々と努力して頂いておりますが、中々良い治療薬ができないのが実情です。高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究所の大島俊一郎助教授が開発されたワクチンの効果はすばらしいものなのですが、ワクチンの大量生産技術開発で少し苦労されておられます。お会いするたびに「早くお願いします」とお願いしておりますが、鮎は年魚で一年中いないというのが、開発の遅れる原因だそうです。しかし、製薬会社も決まっており大量に出来るようになれば、再び鮎釣り全盛期を迎えることができます。平成19年、東京(多摩川)・広島(江の川)・山口(錦川)で「エドワジエラ・イクタルリ」による鮎の大量死が見つかりました。水温が上った状況で発生するアメリカや東南アジアのナマズの病気で新たな心配の種でもあります。しかし、今回は行政の動きは素早く、放流稚魚の出荷段階での検査をするよう指導が出ています。こうした病気は、人間に害は全く無いのですが、鮎はすぐに影響を受けます。感染ルートは、冷水病の場合、冷水病に感染した琵琶湖産の稚鮎放流によるものでした。しかし、現在は各漁協も病気に強い鮎や温浴処理した稚鮎を放流するようになり、一時期のようなことは少なくなりました。
釣り人も他河川への移動することで冷水病を媒介する原因となるのが判り、アルコール消毒や天日乾燥をした道具や衣類を使用するなど、常日頃から注意する必要が要求されています。「エドワジエラ・イクタルリ」の場合は感染ルートが判っておりませんが、同じように他河川に移動すると感染しますので、同様の注意をお守りいただく事を伏してお願い申し上げます。(釣り人の不注意で鮎を全滅させることになります)(飼育している魚類を河川へ放流することは大変な事態を及ぼす場合がありますので絶対にやめてください)

さて、鮎釣りも随分変わりました。冷水病を発症す原因は、鮎が受けるストレスが原因だと判っています。カッカとしやすい鮎は、一番に発症します。平成19年栃木県のある河川で放流した鮎は、大変追いが良い鮎で、釣り人に大変喜ばれたのですが、2週間後には、冷水病が原因で殆んど死んだそうです。余りカッカしない海産の天然遡上の鮎は、例え感染しても7割は大丈夫だそうです。しかし、その分追いは悪い鮎となります。その鮎を掛ける技術と道具を早く見つけた者が、竿頭となるのです。
鮎バリも、ハリ先がカーブを描いていたらケラレるのでストレートになり、竿も長さが短いものを使う鮎師が増えるなどドンドン変化しております。仕掛けも細く小さく強くなりました。鮎バリのプロチャラ5.5号を出した当初は、ヘソバリか!と名人に揶揄されましたが、今は、どのメーカーも出しております。昭和62年に開発した久保狐は短軸で、ハリ先を短くした業界最初のハリで、それ以降色々な形や名前のハリが各社出すようになりました。今では、普通に使われているウレタンチューブを使ったハナカン(エンゼルリング)を最初に発売し、色々な展示会でその効果を説明し、使っていただいた結果、多くの鮎師から囮交換が非常に楽になったと感謝されました。
こうした開発もマルトフィッシングチーム(MFT)の皆さんが11月の寒い川で鮎のハナに色々なテスト品のハナカンを試して協力してくれたお陰だと感謝いたしております。
市民フォーラムでの講演の内容(全国の鮎の復活に挑戦する河川を紹介・・)
・平成23年11月19日 於:広島文教女子大

鮎が釣れない冷水病以外の理由

稚鮎を放流しても、解禁になったら掛からない河川がある。理由は色々と考えられる。その一つは冷水病があげられる。しかしながら、単に冷水病を原因として挙げれば済む問題ではないと思う。

今まで良かったのに急に鮎が居なくなった。その原因の時期を検証してみると、各家庭の糞尿処理が汲み取り式から合併処理浄化槽になった頃からと思える。

何故か、浄化槽から排水される際、必ず塩素処理をして排出される。その塩素が蒸発する時間は、約1時間と言われている。排水先が、鮎を放流する河川ならば当然塩素の影響を約1時間は受ける。

鮎の主食は珪藻・藍藻等の藻類である。藻類について専門に研究されている方【東京学芸大学名誉教授:真山茂樹氏】の講演での質問コーナーで、『珪藻類が死んでしまうのはどの程度の塩素濃度でしょうか』と質問したとき言われたのが、『水道水に含まれる残留塩素でも充分死滅する』・・・・では、浄化槽から排出されている処理水に含まれる残留塩素は、水道水に含まれる塩素濃度どころではない。

処理水の排水時の塩素濃度を抑える基準は?塩素濃度は河川水に薄められても長い距離珪藻類に影響を与え、鮎のエサが失われる。当然、その場所に鮎を放流してもエサがないので居っかない。当然、鮎が釣れない場所となる。

塩素という毒物は、自然に消滅するので、原因物質として証明するには、現場の河川水を直ぐに検査する必要がある。容器に入れて研究機関に持ち込んでも揮発、消滅して検出されない。鮎がいない謎の理由の一つである。

【掛け流しの温泉水も浴槽の温泉水を浄化する際に、塩素消毒を行う、風呂の掃除の際にも多量の塩素が使われており、何処何処温泉の下流には鮎がいないと言われる原因とも思われる】

考えれる解決方法は、処理水の放出の際に無毒化する薬剤に通すこと。それができない場合には、出口に池を作り塩素を蒸発させる方法もある。処理水が池に流れ込むのでは無く、噴水式にして気化を促す方法もとるべきと思います。  

次に問題となるのは、放流する種苗

何代も養殖池で継承され続けた親魚の卵子に、天然の雄の精子を掛け合わせる方法で、受精卵から仔魚、放流サイズまで育て放流している鮎『鮎の形をした魚・スーパーに並べる鮎と私自身は思っている』何代も継承された鮎は、恰好は鮎に似ていても、育った環境と遺伝継承の劣化により鮎の性格が失われている。

昔は、琵琶湖や海で稚魚を採取し、そのまま放流したり、中間育成で大きく育てた鮎を放流していたのが、人工的に種苗生産する技術が研究確立され、養殖魚として安価にスーパーの店頭に並ぶようになった魚(アユ)と同じものを、河川に放流しているのだから、自然界で鮎の本能を取り戻す事など出来わけがない。河川の増水・濁りにも耐えられる遺伝子は、失っていると思う。

考えられる解決方法は、池の親魚を使わず、遡上した天然アユの雄雌(終盤に河川で捕獲した鮎の場合、遡上か放流かの判断に時間が掛かるため)を池で親魚になるサイズまで育て、その受精卵を使うことで、元々の遺伝子を持って鮎として縄張りを形成し、環境の変化にも対応し易い鮎となるはずです。

ただし、前述の養殖方法は、仔魚の段階でエサをよく食べ大きく育ち、人を恐れない育てやすい鮎なので、義務放流数をクリアすれば、組合として存続できると思っている所は、釣り人の事を無視し、楽な方を選択する可能性もあります。

追いが良いからと言って自然界では考えられない琵琶湖産の雄の冷凍精子を、冷水病に強いとされている海産の雌の卵子と掛け合わせ、冷水病になりにくく且つ、追いも良いスーパーアユを研究していると、聞きました。自然界にどの様に影響を及ぼすのか、検証されて放流するのであればと・・・、少々危惧しております。

 

河川に影響を及ぼす農薬について

2024年1月ドイツのバイエルの株価が1月29日のフランクフルト市場で急落。米モンサント部門の除草剤「ラウンドアップ」の使用で、癌になったとして訴えた元お客に、アメリカの裁判所が約3400億円支払う判断が下されたと、Bl00Mbergが伝えている。

「ラウンドアップ」は以前、我家の庭の除草剤として使っていたが、ベトナム戦争で使われた枯葉剤が、大量に残ったのを販売していると聞いて、直ぐに使用をやめた。

やめたのはずいぶん前の事だが、未だに除草剤として宣伝もし、ショップでも前面に置いて販売もしている。ヨーロッパなどでは危険性が疑われたら、直ぐに販売を取りやめるような法体制になっていると聞いた。販売中止で売れ残ったものを、日本で大々的に売り切ろうとしている企業と、販売を見逃している環境省などの政府機関の対応がおかしいと思う。今までの公害訴訟で、国民に苦痛と健康被害を与え、訴訟され、長い年月争った末、膨大な賠償を支払った過去があるのに。(国民の税金の中から)

行政機関に、この製品は問題が有るのではと言っても、直ぐには認めない。訴える人が、その問題を証明する必要があるからだ。

2024年6月(公財)日釣振本部からの依頼で、2カ所の河川水の採取をしました。ネオニコチノイド系農薬が及ぼす影響を証明する為、全国各地の河川で6月と8月に行います。この薬剤の影響は、ミツバチが帰巣する本能を失って蜂蜜が取れない問題で、ヨーロッパでは使用を禁止されたそうです。日本は未だ・・・。

何が河川に問題なのか?何処に使うのか?何時使うのか?・・

害虫駆除に稲穂が実り出す前の田んぼに散布、お米の大敵のカメムシ駆除が目的だが、他の虫も駆除する。

なぜ、カメムシ駆除なのか?農家の経験が無い私には判らなかったが、調べるとカメムシに害されたお米が黒くなってお米の等級が下がり、農家の収入減に繋がるからだ。その為、田んぼに稲穂が出る前に一度散布し害虫を防ぐのだが、駆除されるのはカメムシだけでない。川にいた水生昆虫が成長した虫も多く含まれる。

駆除数が多くなれば、当然親となる虫が少なくなるのだから、水生昆虫も減少する。それを食していたウグイ、ハヤ等が減少する。それらは珪藻も1年中食してくれ、水中の石を磨いてくれ、常に新しい珪藻が作られてくる。鮎を放流しても直ぐにエサとなる珪藻があるという訳だ。ウグイ、ハヤが少なくなると珪藻が腐り苔となり石を覆う。また、川砂を石に貼り付ける虫が増えて、石の周りがザラザラのサンドペーパーのようになり、珪藻が有ってもアユが近づかない。河川汚濁が酷くなり、薄汚れた川となる。ウグイ、ハヤが住む川はアユも育つ。

夏の夜道のドライブでフロントガラスに、虫が当たって汚れが酷かったが、今は少なくなったというように感じられる。宍道湖ではウナギが取れなくなったという。エサの小魚が減ってきたからか?海にも影響があると思われる。

おかしいと思ってもは行政は動かない!天下り先を大事にする行政、広告主を大事にする報道機関、世直しを任す政治家は?ただ、過去の民主党政権の恐怖は、二度と味わいたくない。

法律は、政治家が作るもの。行政マンに任せては、天下り先に遠慮する。政治家は多額の政治献金を企業から受けては、法律の制定時に遠慮する。過去の日本・中国・朝鮮の時代劇を見ているようだ!

 

2024年6月11日 太田博文