鮎釣講座 流水の講義

流水の講義
.あゆとは

アユ・鮎(中国語で、なまず)・香魚(中国語で、あゆ)は、日本、中国、韓国(韓国語では、銀魚)、台湾、に生息しています。日本では、北は北海道の道南、南は奄美大島(琉球アユといわれる)まで生息しております。
アユは、海で育ち、春、2月から4月にかけて生まれてきた川に遡上をする天然の海産と、琵琶湖に流れる川(人工河川も含む)で産卵し琵琶湖で育った琵琶湖産と、人工に産卵場で産卵し養殖池にて養殖した人工産とに大別できます。ただ山間地にて河川放流後ダム湖で繁殖した例もありますが、ダム湖のプランクトンの関係で、継続しての繁殖は無理と聞いております。

2.鮎の生態と釣り方

海ではプランクトンを食べて育ち、川を上ったばかりは渓流魚と同じく虫なども食べます。その頃の釣り方で「どぶ釣り」というものもあります。これは、虫に見立てた毛ばりをハリスに付け上下させながら誘いをかけて釣るものです。

普通この釣り方は、初期の小さい子鮎しか通用しないと言われていましたが、大雨で常食のアカが飛んだ後など淵において「どぶ釣り」で20センチ近い物まで釣れる事もあり、アカを食べたら、以前食していた物は食べないといった通説は間違っています。また、「エサづり」という釣り方もあります。この釣り方は、小さく切ったシラスを瀬尻の淵に撒きシラスを柔らかくし針に刺し浮き釣りで釣る釣り方です。高知では挿し餌にノレソレ(タチウオの稚魚のよう形をした白魚)を使って釣っております。

 4・5月頃になるとアユは、遡上しながら水中の石につくコケ・アカ(珪藻)をはんで大きくなります。アユがついた川の石は輝いてきますので、川が明るくなったらアユがいる、ということが判ります。この事は、アユの終盤になると、釣れる釣れないといった釣果にも関わる事です。

 6月初期の若アユは皮も柔らかく、おいしいアカが出来る石には、縄張りをもった大きなアユがおります。特に琵琶湖産のアユは、縄張り意識が非常に強く自分の縄張りの中に入ってきたアユを追い出し、自分の餌場を確保します。

この性格を利用して、オトリのアユを、縄張りの中に入れそこにいるアユをオトリに付けた針で釣る方法が「友釣り」です。その時期に使う針は、やや太軸の針を使わないと、身切れといって、掛かっても身が切れてバレてしまう事があります。

また、ほかの釣り方では、直接ハリスに数本の針を付けて水底を引いて、そこにいる魚をかける「コロガシ」「ガリ」「チャグリ」と言われる方法や、潜ってアユをみて掛ける「引っかけ」「ちょんガケ」などあります。

 7月になると琵琶湖産のアユも盛期に入り、皮も少し固くなって、その頃は、細軸の針が使われます。また、海産のアユは7月頃から盛期に入り、琵琶湖産に変わって良く掛かるようになります。
 8月に入ると、「土用隠れ」といって、アユが釣れなくなる時期があります。この時期は、アユは、暑さを避けて深みの淵(トロ場)に多くおります。また、アユは目で見てオスとメスがはっきりと判別できる頃でもあります。釣り方としては、「泳がせ釣り」が特に有効になります。
(鮎のオス・メスは、生まれた時点で決まっており、尻ビレの形状の変化により目で確認出来るのがこの時期です)

8月の終わり頃から琵琶湖産のアユは、産卵の準備に入り、メスをオトリにしないと掛かりにくくなります。またこの頃のアユの皮は固く、針先は鋭くないと、けられてしまい、掛かりにくくなります。小針の方が鋭いのですが、あまり小針だとアユが大きいので馬力と自重、プラス流れで、針が折れたり曲ったりします。また、この頃のアユは警戒心が強く、針の大きさや針の色によっても近くには寄ってきたり、近くには寄って来ても逃げてしまうことがあります。

 9月に入るとアユは一雨ごとに、琵琶湖産のアユは出産の為に川を下り始めます。産卵は、「瀬つき」といって小石のアカが付いていない(卵が付きやすい為)チャラ瀬で始まります。瀬つきでは、メスの回りに何倍もの数のオスアユが群れて、産卵と放精を繰り返します。

釣り方は友釣りでは掛かりにくく、例え掛かっても偶然掛かる程度で、友づりの醍醐味は余りありません。この時期産卵を終えたアユの釣り方は、針を3本くらい付けてコロガシで釣る方法が一般的です。

 10月に入ると海産のアユが産卵の準備に入ります。この時期のアユは、大きい物で30.3センチを越す、いわゆる尺物が取れます。球磨川において、45センチのアユを船に乗った漁師の方が友釣りでつり上げた、ということを聞いております。球磨川では34センチぐらいのアユの魚拓を見ていますので、40センチを越えるアユがいても不思議ではないと思います。

 11月・12月上旬頃にも河口付近に産卵をしていないアユはおりますが、アユ釣りをしている釣り人は少なくアユ釣りの終わりと言えるでしょう。

3.友釣りの道具

注:地域により川の幅、流れの強さ、アユの生育度による大きさによって異なります。

使われている道具の説明

アユ竿 9m~10mの、のべ竿 初期は中硬クラス 中期以降は中硬硬のやや硬めの竿

天上糸 仕掛けの長さを調節し、雨などで張り付かないナイロン糸

水中糸 水の中に入る糸で、通常は、ナイロン糸が多く使われている。近年は、金属糸、新素材のハイテク糸、フロロカーボンの糸などが使われている。

目印  化繊の毛糸が主で水中糸に数本付けてオトリのアユの居場所を知るものです

ハナカンハリス ハナカンやサカサばりを付ける糸

ハナカン オトリの鼻に付ける輪、数年前まではフック式ハナカンやリング式ハナカンが主でしたが、近年ワンタッチハナカンといって刺したら自然に閉じる方法でスプリング式ワンタッチハナカンが一時主流になったがスプリングが折れてオトリがいなくなる事が多く発生し今では、ウレタンチューブを使ったワンタッチハナカンが多く多く使われています。

サカサバリ シリビレに打つ針で、仕掛けの錨針が魚体から離れ難くするためのもの

ハリス止め 仕掛けの3本イカリなどを取り付けるもの通常サカサばりと一緒にして使います。

仕掛け チラシばり 3本4本イカリ

その他

脊ばり オトリが強い流れでなかなか入らないとき使う。引っ張る支点を変えることによって流れを利用して底に入る事が出来る。

脊カン ハナカンの先が尖っていて、鼻でなく、脊ばりと同じ所に刺す。脊ばりと同じような効果があり、仕掛けがシンプルなので、慣れるとおもしろい。

4.釣り方

アユは石を釣れと言われています。天然のアユは底に限りなく近くにおります。その為仕掛けは限りなく水流の抵抗が少ない仕掛け造りにしないとオトリのアユに負担がかかり、弱って浮き上がり釣りにならない状況になります。

一にオトリ、二に場所、三に腕と言われるぐらい、いくら上手でもオトリがだめでは釣れませんし、またアユがいないと釣れません。では、どんなものが良いオトリと言えるのでしょうか

 養殖のオトリの選び方

養殖のアユはどれもこれも同じではありません。

たらいに移したオトリを選ぶコツは

1.まず色が早く変わるアユ。

2.淵をたたいていち早く動くアユ

3.つかんだ時にぬめりが強いアユ

 天然のアユの選び方

養殖のアユと同じ選び方のほかに針キズの場所を見て決めなければいけません。

良い順としては脊ガカリ、口ガカリ、胸ガカリがあげられます。決して腹に掛かったアユは使わない方が良いでしょう。なぜならば、その場では元気でも、川に入れるとすぐに弱ってしまい使い物にならないからです。一日の釣果を左右する一番大事な事ですので、上手くなるまでは、上手な人に選んでもらった方が一日を棒に振る事が無いでしょう。

 オトリの掴み方

まず、アユをさわる前に、手を水に付け体温を下げてから掴みます。ギュと掴むと弱って死んでしまいますので、優しく包み込むように掴みます。

その時に、親指と人差し指でアユの目をこすってやると、不思議とおとなしくなります。また、その際に胸びれを中指と薬指で挟んでやると、すこしの力でアユを掴んでいられるので、アユは弱りません。

 釣り場のポイント

川には魚の道がある この事は、広島の最後の川漁師の方から聞いたものです。この「道」とは、水が枯れて最後に流れている場所、いわゆる深みでも水が通る場所を言います。多くの鮎釣りの名人は、少年期に川でよく遊び、魚の姿をよく見ているので自然と竿先がポイントを向きます。また、朝瀬、昼トロ、夕のぼりといった時間帯での移動でも自然と体が動いています。これは、アユの食生活の時間帯を表しています。アユは、暗くなったら石の隙間に頭を入れて寝ていますが、コロガシ釣りの漁師の方々は、「暗くなっても、アユは瀬に出てアカをはんでいる」といわれています。

 河原での準備と注意

河原では静かに行動し、オトリをその川の水温にならすために、オトリ缶を川の中に沈めます。

次に、竿に仕掛けを付けます。その際竿の陰を水面に出さないようにしましょう。

また、先行者がいる場合は、出来れば竿一本分離れて下さい。トラブルの元は出来るだけ避けて楽しく釣りをしましょう。

 オトリをつけて

アユをオトリ缶からタモに移し、ハナカンを通す。ここが初心者には、一番難しい所です。オトリを優しく持ち、鼻を少し水面から出してハナカンを一気に通します。

サカサ針を打って、狙ったポイントにアユの頭を向け、そっと放してやるのです。

上級者と初心者の釣果の差はここではっきりと決まります。慣れたらタモの外で一連の作業を行うようにして下さい。アユを放した後は、アユが自分で尻尾を振って泳ぎ出すまで、決して鼻を引っ張らないで下さい。特に養殖のオトリの場合は、鼻を一度引っ張るとなかなか自分で泳ぎだそうとしないので、野アユが掛かるまでに、かなりの時間を要することになります。

アユが自分で泳ぎ始めたら、終始水中糸を張らないで、少しゆとりを取って自分の位置より上のポイントを泳がすようにしましょう。常に目印を見て、糸の張りに気を配り目印の変化に神経を集中していれば、オトリが野アユと遭遇して追われたとか、お互いのサイズを確認するためかクルクルと2匹で円を描くように泳いでいる状態が目印で理解できます。泳がせ釣りでは、掛かっても糸がふけているので、すぐに手元には伝わりません。反面、瀬釣りなど糸を張った釣り方では、手元にガガーンとすごい当たりがあります。頭の中が真っ白になってしまう衝撃と感激があります。

 野アユを取り込む

掛っても取り込みを失敗すると、弱ったオトリでまた釣らなければいけないので確実に取り込む必要があります。慣れた人は引き抜きでタモに納めますが、初心者は、掛かったら流れの緩やかな場所に誘導し、糸をたぐりよせながらハナカン糸を持ってタモの中に入れます。糸をたぐるときは、いつでも離せるように、指3本でゆっくりと引き寄せます。友釣りはローテーションの釣りです。釣れた野アユを、今度はオトリとして使います。野アユをオトリに使うと泳ぎが違うので、時にはブレーキをかけながら泳がす必要もあります。アユが行きたい所に泳がす事が基本です。ローテーションを守れば、束釣り(100匹)も可能になります。

9月に入れば、尺アユを狙っての釣行もいいです。今までの仕掛けや感覚が大いに違うので、また新たな鮎釣りの解禁として楽しむ事が出来ます。