第9回 憂い無き世界

太田川の流れつく湾、広島湾に江田島という島があります。その島には、昔、全国から優秀な人材が集まる場所がありました。

その場所の名は、海軍兵学校です。その旧海軍兵学校時代から伝わる教訓がありますので、ご紹介します。

五省

1. 至誠に悖るなかりしか  しせいにもとるなかりしか

2. 言行に恥づるなかりしか げんこうにはづるなかりしか

3. 気力に缺くるなかりしか きりょくにかくるなかりしか

4. 努力に憾みなかりしか  どりょくにうらみなかりしか

5. 不精に亘るなかりしか  ぶしょうにわたるなかりしか



自らの責任を問う文面で、読むと背筋がシャンとする言葉です。

今、鮎釣りに於いては、冷水病という厄介極まりない悪病が、業界並びに釣り人を悩ましております。過去の悪行を今更暴き立ててもこの病気は良くならないのですが、最初に冷水病を認識した人が、なぜ早急な冷水病感染鮎の移動禁止処置等の行動を取らなかったのか。組織の力の為に止められたのか。しかし、自らの責任で行動を起こしていれば、現在のように全国に蔓延することは無かったと思います。

今後、別の病気が発生した際に、自らの無責任の為に全国に蔓延させてしまった事を戒め、早急な対策が取れる状態にしておかなければ、もっと厄介なものが出てくる可能性があります。昨年、騒がせたコイヘルペスが良い例です。広島は、全国で新潟に次で観賞ゴイの市場が発達しております。それなのに広島県内で発生していないのは、県の水産試験場が海外での発生をいち早く業界に知らせ、他からの移入の際の指導を行っていたからです。

私達釣り人は、細菌等目に見えないものに対しては、一部の方を除いて全くの無知です。しかし、「知りませんでした」では、通りません。外来魚の問題にしても、撲滅することはもはや無理です。なぜ、ここまで放っておいたのか。国は、自然に対して無責任な開発を行い、国民は、無責任に今まで存在しなかった生物を放してしまいました。ペットとして飼っていた生物を平気で野に放つ無責任。最近では一般河川で、人間に危害を与える恐れのあるピラニアやワニ・ワニガメまで見つかっています。本当に無責任極まりない行動です。

これ以上冷水病を蔓延させない為にも他の病気を防ぐ為にも、私達自身オトリ鮎の他川への移動禁止し、オトリ販売業者の方も、検査済みのオトリを販売する等、責任ある行動を願います。