第4回 2003年アユの現状と冷水病対策を考える

 年々悪くなる鮎漁ですが、今年2003年は、天然遡上も全国的に悪く、漁業関係者によると今年は、裏年にあたり不漁だと言っています。主な原因は、産卵次期に海水温が高く初期の稚魚は、死滅したのでは、と言う説と、黒潮の蛇行により沿岸部にたくさんの小魚が寄ってきて鮎の稚魚を食べた、という説。
また、産卵時に於ける乱獲で、極端に少なくなったと言う説が有ります。最近言われていることに10月11月の雨が少ないと良くないという人もおります。産卵時期に一雨毎に上流部から下り水温の低下と日照時間の変化で産卵をするアユが、下りきれずに中流部で産卵して稚魚が海まで辿り着けなかったという説、川の水が多いと水潮となりプランクトンの発生が非常によく、稚魚のエサが豊富で多く育つ、逆はエサが少なく稚魚の絶対数が育たないという説。

色々な説がありますが、完全に全国均一に悪いと言うことでは、無いので、まだまだ考えられない理由があるのかもしれません。

放流も琵琶湖産を放流しても残存率が非常に悪いと言われていますが、水の冷たい綺麗な川では、しっかりと生きて鮎釣師を喜ばせてくれています。本流よりも支流が良かったと思います。本流にダムがある河川が悪いと言われますが、四万十川には、堰は有ってもダムは、ありません。しかし今年は、遡上鮎は非常に少なく川には、釣り人が皆無に近い数しか入川していません。

こうしたことを勘案し悪くなった結論は、悪条件ミックス。

 対策は、今年から始めないと来年に繋がりません。まず、産卵時期を確実に全面禁漁とすること。時期は、鮎を掛けて腹の卵巣と精巣を専門家が調べれば判る筈です。鮎の腹を押さえたら卵が出る事があります。その時期から一ヶ月間禁漁にすれば海産の鮎は、必ず増えます。ただ、シラス漁(2007年12月に行われた日本水産学界中国・四国支部大会に於いて、シラスとアユの仔魚は同海域の同水深に混在しないので・・との発表があった)など小魚を細かい網で獲ることを禁止する必要があります。放流鮎が育ちにくいことを考えれば天然遡上に頼らないといけないと思います。

 冷水病は、新聞等でワクチンが出来たと発表がありました。しかし、真相を確かめるべく、○○水産試験場に行き研究員の方に伺いました。
10月の学会発表まで詳しい資料・データーはお見せできません。と言う事で大まかな説明になりました。
 冷水病ワクチンとは、冷水病菌を取り出し培養した菌を殺して成分を残したもの、それがワクチンです。
そのワクチンを注射・口・浸漬によりアユに与えます。すると、アユには、冷水病に対する抗体というものができて、冷水病発生しなくなるという仕組みです。
ちなみに、ワクチンの与え方での効き目は、大体下記のようになっています。(データーは、大まかです)
・注射→効き目あり→しかし、コスト高→効き目は、約6割
・口 →効き目あり→マイクロカプセル方式(神奈川県)等で研究中→効き目は、約6割
・浸漬→効き目あり→成分ワクチンとウサギの赤血球の一部を使ってくっつきやすくする→効き目は、約5割
・何もしない→効き目は0割
 国は、注射方式を目指しているようですが、小さい稚アユ一匹づつに連続注射出来る機械を企業が開発資金を出してまでするか問題です。国庫補助金で機械の研究開発費を出せば早道なのですが。
神奈川県で開発されているマイクロカプセルを使ったワクチン投与は、現実に近づいているようです。ただ、これは、養殖用では無いのかと思いますが、期待しましょう。
浸漬方式は、作業が一番簡単です。しかし今までワクチンが、体表にくっつきにくいという欠点が有ったのです。その欠点を解消したのが、ウサギの血液中の赤血球を使ったものです。新聞報道には、9割の生存率と有りましたが、天然アユでの実験でなく。照射時間の調整で冬まで生かしているアユを使った実験データーで、水槽単位の実験データーです。大きな池での成功とか、実際に河川の支流に隔離放流しての実験では、ありません。
河川実験では、農林水産省の認可薬でないと実際には、使えません。狂牛病事件以来、企業よりから消費者よりに転換した農林水産省は中々新薬を認めにくい状況にあるようです。
 全国には、こうしたら冷水病が発生しなかったとか、こういう放流方法にしたら発生が防げたということが有ると思います。試験場もそうしたデーターを知りたがっています。
何かあったらメール(hari@maruto-ayu.co.jp)して下さい。

今不思議なのは体長18cm前後になったら発生する。小さいアユは、発生しにくい。水温が18度前後になると発生する。水温が23度以上になると発生しない。24度の水温に一週間漬けると冷水病菌は、死滅する。毎年5月28日前後に発病する。(解禁までいた鮎が、解禁前夜いなくなる・放流時期が起因か)(2007年に聞いたところ冷水病に汚染されたオトリアユをオトリ屋がイケスに入れた事により、水を介して冷水病菌が川に入り込んだのではという意見が聞かれた)水温が4~5度変化すると発生する。(ストレスによる発生)早期に放流したらアユに体力が出来て発生しなかった。(放流したアユが良かったのかも)6月に放流したアユは、元気に生きている。(水温が高く放流魚が大きいからかも)水の綺麗な川は、発生しにくい。まだまだ不思議なことがあると思います。しかし、良いとこ取りで色々とやって成功すれば良いと思います。財政的には、苦しい漁協もアユが復活したら周辺から一斉に釣り人が集まり、豊かな組合になると思います。