第8回 鮎師が造る鮎の甘露煮

 鮎師の冬の仕事、保存していた貴重な天然鮎を使っての正月料理【甘露煮】造りです。
と言っても私は、2年目のまだまだ、素人ですが、周りには、プロ級の本当に料亭の料理人顔負けの鮎師もおられます。そうした方々から伝え聞いた事と私流をミックスしたものを紹介します。

 まず、冷凍鮎を水で洗い周りの氷が無くなったらグリルで素焼きをします。
(オーブンなら180度で7~8分)
(鮎の目が白くなり皮に少し焦げ目ができたら、ひっくり返し、同じように焼く)

 魚干しネットを物干しにぶら下げ、素焼きの鮎を入れ二日間(一日でも可)干します。
(野良猫に取られないように干す場所に注意する)
(寒風の時期がベストです)

 昆布巻きをする場合一番安く薄いコブを用意し水に入れ柔くする。紐代わりのかんぴょうは、塩でモミ洗いをしてから水を切って使う。乾かした素焼きの鮎をコブで巻き、かんぴょうで何箇所かしめる。

 さて、鍋に入れる方法ですが、これが一番神経を使います。まず、なべ底に焦げ付き防止にキッチンペーパーか竹の皮を敷きます。
 次に昆布巻きの鮎があれば一番に入れます。段差が出ないように敷き詰めます。次に素焼きの鮎を並べるのですが敷き詰める際に段差が有ると、せっかくの正月料理にお頭付きで無いものが出来てしまいます。(鮎の頭は、長い間煮付けると簡単に落ちてしまう)二日間干してあるので落ちにくくはなっていますが、段差が出ないようにパズルを組み立てるように置いて下さい。

 並べ終わったら梅干の大を四個ぐらいと、番茶かほうじ茶の葉を急須用のお茶パックに入れ2個くらい鍋に入れます。落し蓋をして水が落し蓋の上になるぐらいまで入れてガスに火をつけます。
(落し蓋の重石には、どんぶりに水を入れたものでも代用できます)

 最初から火力は弱くして少し泡が出たらすぐに火力を最小にします。時々、泡が出るくらいで充分です。煮ると鮎のお腹が割れて見た目が非常に悪くなります。4時間煮るのですが、その間アクを取り続けます。落し蓋の表面が出たらお湯を追加します。
(丁寧に取らないと鮎の表面に黒いシミのようになって残ります)

 煮終わったら少し冷ましてから水を切ります。水は少し位残ってもかまいません。
(落し蓋を誰かに支えてもらいながらしないと、鮎の姿が崩れます)

 お茶パックを取り出し、また、落し蓋・重しをします。これからが、味付けに入ります。
分量は、お酒(二級クラス使用、料理酒は、塩が入っているので不可)が1
     みりん(本みりん)が1
     醤油(薄口醸造かダシ醤油の方が失敗し難い)が0.8
の割合で、落し蓋以上になるくらい入れてください。
(どんぶりを計量カップ代わりに使うと良いです。最初の味付けは薄味くらいのほうが良い)

 火加減は、最初と同じです。決して煮立たせてはいけません。アクを取りながら(網のアク取り器を使うとダシが無くなりにくい)4時間煮つけ火を止めて冷たい場所にそのまま一晩置きます。
(冷えていくと同時に味が鮎にしみます)

 次の日は、味の調整です、最初お茶で煮込んでいるので、上品な味になっていますので、もう少し醤油を足します。一度に入れず、徐々に足していってください。
(一晩寝かせると出し汁は減っています。落し蓋の上まで醤油を足しては辛くなる可能性が有ります)

 出し汁の味が決まると一端火を止め冷まします。
(最終の味を染み込ませる)

 火を止めて2時間後もう一度火を付けてダシが温かくなった頃に、ツヤ出し用として水あめを大さじ3杯くらいダシに溶かせながら加えます。その後0.5時間ほど煮込んで火を止め、重石を取りフタをして冷たい場所に置きます。

 翌日に容器に鮎を入れれば完成です。
(プレゼント用には、プラスチックの蓋付きなどに入れると形が崩れず見栄えも良いです)

 川魚独特の臭みのない本当に上品な甘露煮が出来上がります。正月のお酒の肴に最高です。